株式会社オオバ

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事業紹介

すでにある「まち」のまちづくり

既成市街地、つまり、すでに建物が建ち道路なども整備されたまちを、再設計する。
そのシーンで主役になるのは、行政やデベロッパーではなく、そこに住む住民のひとりひとりなのです。

「まちづくり」と言うと、新しくまちをつくることと捉える人は多いかもしれません。しかし、すでに建物が建ち、道路が整備された街。そんなまちを新たに安全・安心なまち改善していくことも、私たちの手がける「まちづくり」のひとつ。ここでは都市計画マスタープランにおいて、生活拠点に位置付けられた駅周辺の「既成市街地」の事例をご紹介します。

まず、課題を洗い出すところから。

まず、課題を洗い出すところから。

ご紹介するまちは、駅を中心に東西南北に商店街がつくられ、その後ろには住宅地が広がる歩行者中心のまちです。駅周辺には多くの人が集まる一方、大きな幹線道路に囲まれた駅周辺地区内は道路が狭く、駅前の広場もありません。たくさんの車が入り込んでくることや、自転車のスピードの出し過ぎも、安全上の観点から問題視されていました。また駅コンコースが放置自転車で埋め尽くされ、まちの中にも放置自転車があふれていました。
まちづくりの構想にあたっては、将来、どのようなまちを目指すのか、ということを考えながら、さまざまな課題をどう改善していくかということが大きなテーマとなります。
また課題をみつける工程では、人口の動態や産業の売り上げ、土地利用の変化、交通量など数字的な分析を行うだけでなく、地域住民の生の声に耳を傾けることで見えてくるものも多くあります。地域の人たちからなる話し合いの場を設け、さまざまな立場の人の意見を大事にしながら、一緒に取り組みました。

「歩行者が中心のまち」がコンセプトに。

「歩行者が中心のまち」がコンセプトに。
「歩行者が中心のまち」がコンセプトに。

取り組みの大きな柱のひとつになっているのが、歩行者が地区内で安全に移動するための交通安全対策です。これらについては、年度ごとに路線や区間を決めて、関係者との意見を調整しながら対策を進めています。そしてもうひとつの柱は、活気のある商店街づくりです。これに関しては地域の方々とワークショップを開催したり、まち歩きをおこなったりしながら、消費者の立場からの意見も取り入れて改善を目指します。

駅前にないバスロータリーやタクシーロータリーを整備すべきか議論になりましたが、「歩行者が中心のまち」をキーワードとしてまちづくりの方向性を決定。実際に歩いてみて「ヒヤリとしたところ、ハッとするようなところ」をマップにして、それをベースに交通安全対策を進めました。

  • ・歩行者の買い物エリアへの、通過交通の侵入をおさえるの路面表示の設置。
  • ・車のスピードをおさえるための車線幅の減少。
  • ・交差点をわかりやすくするための改良。
  • ・歩行者優先ゾーンでの自転車の「押しちゃり」化。
  • ・歩行空間をよりわかりやすく。

放置自転車に関しては、鉄道の高架下に駐輪場を設置し、まちぐるみで啓発活動を行った結果、駅コンコース内にあふれていた放置自転車の解消が進みました。

活気のある商店街をつくりたい。

そして、活気のある商店街づくりでは、まちに複数ある商店街それぞれの意見や運営の仕方を尊重しつつ、対話を重視しながら意見をとりまとめていきました。その過程では、商店街自身が考える商店街の活性化と、周辺に住んでいる人々や利用客の要望を調整していくことも大切です。例えば商品や看板のはみ出しの問題は、地域の利用客から改善の要望を受けた方が、商店街としてもルールを決めやすくなリます。

活気のある商店街をつくりたい。

建設コンサルタントが「まち」に関わり続けること。

これまで、まちを新たに開発するとき、主体的なプレーヤーとなってきたのは行政であり、デベロッパー(開発事業者)でした。しかしすでにある「まち」を改善していくときに主役になるのは、実際にそこで暮らす住民のひとりひとりにほかなりません。地域の意見を聞きながら、地域の課題を解決していく。それを支えることも、まちづくりのプロ=建設コンサルタントである私たちの仕事です。
まちづくりの構想を実現するには、地域の人や企業の協力が必要で、比較的短期間でできるものもあれば、長い時間を要する場合もあります。
「まちづくり」は発展していくものです。地域の人々との信頼関係のもとに建設コンサルタントが継続的に「まち」にかかわり支えていくことは、地域をマネジメントしていくためにも大切なことと言えるのではないでしょうか。(東京支店 小林理子)